糖質制限と店主

大山久美

 

低糖質料理とワイン ロカボナ

店主・栄養士

 

 

現役大学受験に失敗後、就職氷河期を言い訳に数々のアルバイトを渡り歩く「フリーター」時代を5〜6年ほど過ごす。その後、一念発起猛勉強し早稲田大学社会科学部に入学するが、色々あって、中退(後悔😂)し、路頭に迷っているとき、心ある方のご助言で名門(と思っていた)東京の駒込にある香川栄養学園栄養士科(現女子栄養大学短期大学部)に入学。今度は苦しみつつも、ちゃんと卒業。

 

 

にもかかわらず、わけあって、栄養士とは全く関係のない職場で非正規雇用の職員として不完全燃焼の日々をおくっていた。

 

 

その頃、今のパートナーと出会うが、間もなく彼の糖尿病が発覚。

 

 

これが私に課された使命だったのか、と怯むことなく「私の力で彼の病気を絶対に治す」と根拠のない自信のもと決意。

 

 

彼の病状は発覚当初から即時インシュリン導入が必要なほど悪かったが、栄養士の知識を総動員したダイエット食と自転車通勤で、インシュリンも血糖値を下げる薬も止めることが出来るほど良くなった。

 

 

しかし、インシュリンをやめることは出来たのに、相変わらず血糖値を下げるお薬は継続されていた。同時期、立ちくらみの症状がちょくちょく出るようになり、「薬、本当に必要なのか?」と私は疑問をいだき、ネットや文献をあさりあるとき、京都にある高雄病院理事長である江部康二先生のブログを発見。スーパー糖質制限を知る。

 

スーパー糖質制限とは、一食の糖質量を20g以下に抑える食事法で、江部先生は「一回の食事で摂取する糖質量を20gとした場合、2型糖尿病ならば60mg/dLの血糖上昇で済みます。空腹時血糖が100mg/dLならば食後血糖値は160mg/dLになり、全く薬剤を使うことなく血管内皮損傷のリスクを抑えられます」1)と述べている。

 

 

しかも、「糖質に関しては、必ず食事で摂取しなければいけない物質は存在しません。人体にとってブドウ糖は不可欠な物質ですが、肝臓での糖新生により糖質以外の物質を使っての合成が可能であり、しかも糖新生の機能は非常に能力が高く、外部からの糖質がなくても、必要なブドウ糖を十分に合成できるからです」2)とのこと。

 

 

それならば、試してみようじゃないか、私は栄養士、出来るかもいれない。

 

 

さっそく、糖質制限食に理解のあるお医者さまを探し、実践開始した。

 

 

彼はそれからずっと血糖値を下げる薬を飲んでいない。

 

 

「なるべく薬を使いたくない」とおっしゃる主治医の先生に2ヶ月に一度血液検査をしてもらい、私は美味しい糖質制限食を作り、彼の血糖コントロールは上手くいくようになった。

 

 

2018年、調子に乗った私は「彼を助けてくれた糖質制限食が、同じように困っている人を助けることが出来るのではないか!」と、安月給を注ぎ込み超低資金DIYで東京都板橋区に低糖質料理と辛口のワインを提供する「ワイン酒場ロカボナ 」をオープン。

 

 

夕食時に主食のお米を食べるかわりに、糖質制限に馴染む辛口ワイン(飲み過ぎ注意)と低糖質に仕上げたおつまみで、食べたい気持ちを我慢せず楽しく糖質制限が可能であることを提案してきた。

 

ずっと勤めていた職場を会社都合退社💦(コロナ禍で色々折り合いがつかず泣く泣く)したのを機に、 2022年、東京のお店を閉め、銀行から借金をし生まれ故郷のつくば市に、こだわりの空間とより糖質制限食に焦点をあてた「低糖質料理とワイン ロカボナ 」をオープン。安全で美味しい素材と手作りにこだわり、板橋の頃よりさらに一歩進んで、腸内環境も整えていく糖質制限食を目指し、田舎暮らしを楽しみながら日々勉強と試作を重ね、ギリギリのところで踏ん張る毎日を生きている。

 

 

趣味は、音楽と猫。

 

1)江部康二著.糖尿病治療のための!糖質制限パーフェクトガイド.東洋経済新報社,2017,p.67

2)江部康二著.糖尿病治療のための!糖質制限パーフェクトガイド.東洋経済新報社,2017,p125